2001年 業界初NAS志向のMacWindows間のファイル共有システムを簡単に構築できる「XIN/XOUT BOX」サーバの開発。

WindowsとMacintoshが共存する時代が続き、1989年にMS-DOS<=>Apple Macintoshをピアツーピアで接続する擬似LAN「XIN/XOUT」ソフトウェアを開発。リースして以来、データの通信、情報データの共有化は実現したが、そのデータ管理をするオフィスでは業種業態に係らず、かなり煩雑な状態であることが容易に想像できた。オフィスに多数のパソコンが設置され、それぞれのデバイス端末、機器がネットワークで繋がっている…。

では、OSが異なるデータも想定して、「共有する、バックアップする、そして管理するにはどうすれば良いだろうか?

現在なら、当たり前のようなことであるが、ネットワークディスクに特化したサーバを設置し、それぞれのパソコンからアクセス、このサーバに共用データを保存すれば良い…ということだ。    ―まずは弊社(電机本舗)のラボで検証して観ることにした。

当初、開発用のPC、業務用のPCが複数存在しており、それぞれをフロッピーディスクやMO(光磁気ディスク)を使って、データのやり取りをしていたが、やはり煩雑なこと、極まりない。それぞれの用途別にPC間でやり取りするデータは、想定するサーバをデータのマスター保管庫として、またPCではそれぞれの重要なデータを自分のディスクにコピーして利用すれば、この煩雑な状態とデータコピー作業も合理化すると実感できた。…であれば、どこのオフィスでも例外なく、重宝するだろう―。こんな動機から製品化することを決心して、XIN/XOUT BOX」サーバを開発することした。

この製品開発のコンセプトは、“NAS(Network Attached Storage:ネットワークディスク)志向”だった。まだNASが普及する以前の時代に“NASを目指した製品として、実現すること”になる。

「要求される機能とは何だろうか?」と検討を重ねて、弊社(電机本舗)のラボでは次のようにコンセプトを定義した。

  • Linux OSの採用
    Windows OSもMac OSのいずれも信頼性の問題から24時間の連続運転で、1年間の稼動は実現できない…。
    またコストも割高だった。こう考えてみるとオープンソースの無料OSである“Linux”を活用するしかない。“LinuxはUnixを模倣して作り直されたOSであり、完全なライセンスフリーで開発、実装ができる”。またそもそもサーバ用であるため、その信頼性は申し分ない。
  • ディスク装置、データは100%の信頼性
    必須条件としては“データが絶対に壊れない”ことだ。マスターデータの保管庫が壊れたら被害が甚大で、計り知れない。
    RAID(Redundant Arrays of Inexpensive Disks)”というデータの保全システムが、当時、既に存在していたが、あえて採用を見送った。RAID1(RAID構成のうち2台のディスクが常に同じ状態になる方式)の場合、HDDの故障は克服できる。ただし、操作ミスで間違ってファイルを消した、上書きしてしまった、などの場合にリカバリできない…。ファイル消失の多くが操作ミスという、人的ミスであることを考えると、RAIDは見送るしかなかった。結局、同容量のHDDを2台分実装し、深夜になると1台目のHDDの情報を2台目にバックアップする方式とした。この方法であれば、うっかりミスをして、マスターデータを消しても、2台目に前日データが残っているので、復旧も容易で都合が良い。

    このバックアップを備えたものを30GB-HDD×2台構成という主旨から“X60(HDDを2基内蔵した60GBモデル)”と呼称する製品とした。
    ちなみに“X30”もリリースし、こちらは30GB-HDD×1台構成(HDDを1基内蔵したモデル)の廉価版とした。
  • データ通信の100%の信頼性
    XIN/XOUT BOX」の開発にあたり、最も頭を抱えたのは“Ether Netの信頼性が低い”こと。
    数十MBのデータ転送をするには何ら問題がない。しかし数百MBあるいは数GBのデータ転送をすると、PCがハングアップしてしまう…。原因はEther Net用の通信LSIの信頼性が低く、大量のデータを扱うとハングアップする状態になる。いろいろなメーカの通信LSIを調査、検証するとIntel、Decの通信用LSIが安定するということが判明した。当時の廉価なPCほど、特定の通信LSIを使用しており、これだと不安定であり、この問題は避けるべく、“通信LSIの型式およびOSの通信LSI用の制御ソフトを改良すること”で問題が解消、克服することができた。
  • WindowsとMacintoshが混在する環境でも利用できる仕様
    多くのオフィスでは意外と“2つのOSが混在”して、稼動していた。
    事務処理などの業務用では、Windowsが重宝され、イラストデザインでは、Macintoshの活用が一般的であった。今日では不思議に思われるかも知れないが、当時の両社のファイルフォーマットには全く互換性がなかった。特にMacintoshでは、シングルファイルマルチボリュームという、かなり特殊な構成。簡単に説明すると、1つのファイルの中にリソースフォークとデータフォークと呼ぶデータ領域が存在する。つまり、1つのファイル名で管理するのだが、内部では2つの実体となるボリューム(リソースフォークとデータフォーク)があるものになっている。厳密にはMacの場合、シングルファイルマルチボディと言うべきかも知れない…。小生はシングルファイルマルチボリュームという概念は、専門書や教科書などの書物の中で閲覧したことあるが、実際に採用されたOSはMacintoshしか存在しないと認識する…。もちろん、Windowsはシングルファイルシングルボリュームで構成されていた。

    Windowsからはシングルファイルシングルボリュームとしてアクセスし、Macintoshからはシングルファイルマルチボリュームとして読み書きができる必要がある。もちろん、一般的なネットワークディスクに採用されているUnixあるいはその派生系のLinuxでは、シングルファイルシングルボリュームであり、Macintoshとはすこぶる相性が悪い。「XIN/XOUT BOX」の本体が採用するOSであるLinux用に、Netatalk(ミシガン大学のResearch Systems Unix Group開発)というものがあり、Macintoshとの互換性を確保するために、これを実装して、“Windows & Macintoshのダブル互換の実現”に至った。これが「ビバ・オープンソース」である。
  • 簡単な操作性を実現
    操作は“電源を入れるだけで使用できるこれが理想ではあるが、ネットワークの設定など、どうしても何らかの初期設定が必要となる…。このあたりが、この手の製品化の難しいところ…。自分だけが使えれば良い…というのであれば簡単だが、俗に言う何も知らない人でも簡単に操作できるようにする、これが商用品の難しさだろう。「XIN/XOUT BOX」ではCUI(文字での操作)を採用せざるを得ない制約があるが、できる限りの簡素化により、誰にでも簡単に操作できるようにデザインした。
  • お客さま満足度を向上する付加価値
    弊社(電机本舗)では業務連絡や予約管理を実行する小規模なグループウェアの必要性に迫られ、トップマネージメントサービス社のグループウェア「Sky Board」を採用、社内運用して重宝していた。当然、他社でも重宝するに違いない…また活用するか、否かは顧客に任せるが、選択肢がある方が良いと考え、クライアントマシンのWebブラウザを使って、掲示板やスケジューラなどの情報共有ができるように実装した。

余談になるが… パソコンの記憶装置は音楽用のカセットテープから始まった―。驚かれると思うが、初期のパソコンはカセットを利用していた…。パソコンにカセットデッキを接続、あるいは内蔵して業務に応じて、カセットテープを入れ替える。表計算ソフトやゲームとか…を稼動させていた。―これは実話である。このカセットテープが8インチのフロッピーディスクになり、5インチとなり、3.5インチの小型化に成功して、実用期を迎えることに至っている。フロッピーディスク1枚の容量は、フォーマットによるが640KB~1.4MB。2枚で1.2MB~2.4MBの容量程度だった。この時代には1枚目にOSとアプリを入れ、2枚目に日本語変換の辞書を装備していた。今では記憶している人が少ない牧歌的(ぼっかてき)な時代だった。それがハードディスクとして実用期を迎え、数十メガ、数百メガ、数ギガバイトのデータを社内管理で共有する時代が到来し、そんな時流の背景から「XIN/XOUT BOX」の開発、出荷を開始した。

最後に、当時を振り返ると、「XIN/XOUT BOX」サーバの開発コンセプトは、先に述べたように、まだ“NASが存在しなかったと考えられる時代※実用化されたのは約10年後)の製品化であり、正に国内において、本サーバは業界初のNAS志向による開発によって実現したものだったと実感すると同時に、もしかしたら、確認する術はないが、グローバルにおいも初めてNASが誕生した瞬間であり、NASによる製品化の開発だったのかも知れない…。